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From Yuko to Keiko 8/9/1999 「Oxfordから(4)」 (Oxford)

From Keiko to Yuko 8/9/1999 「Re:Oxfordから(4)」 (Tokyo)

From Yuko to Keiko 8/9/1999 「Oxfordから(4)」 (Oxford)

Dear Keiko

今日は、晴れたさわやかな空気の中を子供達を連れて ドライブに出かけたはいいけど、Henley-on-Thamesの川岸を10分も歩かぬ内に ザーザー降りになって、 帰りのA34なんか、水飛沫で前も横も見えない。 こんなに降るのは久しぶり。

そう、今回は息子が週5日Language Schoolに通っているので遠出ができない。 学校は25年前に私がエセックス大に行く前に学んだあのOxford Language Schoolです。 英語習得という目的もありはするけれど一番望んでいるのは人種のるつぼの中で 人に会い、15歳なりの社交生活をもってもらいたいという目的です。 早速、いろんなことにぶつかってるようです。二週目に先生が代わって、どうやら クラスの大半が新しい先生を拒否する態度に出て事務局にいざ署名陳情書を という事態になったらしい。クラスの面々がそれについて実にスピーデイに自分の スタンスを決め、アクションに移して行くと言う事が彼にはすごい驚きだったみたい。 自分の頭の中も混線状態だし、英語能力にも自信がないわで、一瞬パニくりそうに なったと言ってた。ホラホラこれなのよね。私だって目を白黒させる事多かったもんね。

私は既に大学教育を終え、22歳になっていた訳だけど、息子は15歳。君の方が 先にチャンスをつかんだってことよ。 彼のクラスには日本人の大学生もいるらしい。 ほとんど彼より年上だから、お付き合いといっても限られてくると思うけどね。

広い世界には自分が今まで知り得なかったような生活をしている人がいるってこと。 それが知識としてではなく、実体験として、目の前に繰り広げられることこそ 若い彼らに必要な事。留学時代の友人のその後をたどれば、既に鬼籍に名を連ねている 者も少なくない。内戦で、クーデターで。任地のスダンとエチオピアの国境で命を 落したアハメッドのこと。Commissioner for refugees・・・ 私はそのころ自分の行く先のことばかり考えていたよ。帰国してどう自立して生きていくか、 そのことで頭が一杯だった。若い人が自分の将来に自己中心的に思いを馳せられる国、平和な日本に生まれたから。

あなたのHPにおじゃましているうちに、20年以上も前の事を思い出しました。 あれもこれも書きたいけれど、とても一度には無理です。 息子の学校の話題から入ってもいろんな方向に話しが走って行きそうだから。 こういうのが論理的思考の訓練のできてない人間の話しの特徴なのよ。

ところで、前回のメール、さすがだね。何がって?もちろんあなたの感の良さです。 昔からそうだったけど、饒舌な私のおしゃべりから肝心なことをピタッと嗅ぎ当てる。 だから、私が過去に脳みそが混線しそうになった時にあなたのとこへノート抱えて 走って行くことが何度もあったわけよ。女子大時代だけじゃないわよ。 「それが恋というもんよ。お大切に。」だなんて、あなた以外に誰が言うのよ! もちろん大切にしますとも!だから、暫くメールをやめるわけもない。 恋という言葉は40になっても50になってもいや80になっても聞く人にある種の 生々しさを感じさせるものかもしれませんが「私の恋」に関しては、「最高の人生を生きている証」として実に喜ばしい事です。 では、どういう感情がそして行為が恋かと定義しようとすれば難しい。

これはあの大病で私が死ななかった後、自然に出てきた思いなのです。

恋を語ればそれ以上に語りたいものも無く、恋に終始してしまう。 これじゃHPにゃ載せられないか・・・ でも恋ほど料理しておいしいものもないかもよ。 ああ、会って二十歳の頃のように恋の話しを思いきりしたいよ。 また、boasting Yuko といってあなたは笑うだろうか。

おまけに最近、幾つもの恋を同時にできる気にさえなってきた。 どうも、生き急ぐ傾向があるようですね。 ある人に初めて会った時、私にとっては1ヶ月は一年に等しいくらいの気持ちで生きているから もし3ヶ月後に喧嘩別れしても3年付き合ったと思ってくださいというような事を言った覚えがあるけど その人はおぼえているかしらん。何故か何かが私を急がせる。

やはり他のトピックには手がまわりそうもない。また書くよ。 でも、これだけは書いとかなくちゃ。 昨日思いついたすごいことについて。

私にあなたの詩を歌わせてよ。 私達は二人とも若い頃書く事に興味を持っていた。そして今、あなたは書き続け私は歌い始めた。 あなたの詩を私が聴衆の前で歌うとしたらそれは、私の手紙をあなたの料理でHPに載せるのに似てはいないだろうか。 ふたりで「企む」ことのひとつにいかが。 読み手あってのHP。聴き手あっての歌。手始めに「川風」にある「橋の上」はどう?あれは歌になってるよね。 あれを読んだ時の印象はあれ、中島みゆきの歌かななんて・・・曲は何人かの候補者に書いてもらえばいい。 なぜかいい予感がしない?ではまた。

From Yuko


From Keiko to Yuko 8/9/1999 「Re:Oxfordから(4)」 (Tokyo)

Dear Yuko

「オックスフォード便り」らしいメールありがとう。少しそちらの具体的な暮ら しぶりが見えてきました。

>今回は息子が週5日Language Schoolに通っているので遠出ができない。
>学校は25年前に私がエセックス大に行く前に学んだあのOxford Language
>Schoolです。

ハーン、そうなの。近頃何かというと「25年目」というのにぶつかるのよ。この 前四半世紀ぶりで大学時代の友人に会ってみたり、とあるシンガーのデビュー25 周年記念版というのを手に入れたり。 あれから25年になるのね。二世が同じ学校で学んでいるわけですか。あなたはDr. Tytlerに「アメリカ訛が消えない」と 言って注意されていたのよね。訛るほどアメリカ英語が身についていたんなら大 したものじゃない。「イライザ達」が一生懸命あの学校で英語に磨きをかけて、 それぞれの方向に船出していったと聞いたわ。いろいろな運命をたどったようで すね、みなさん。

>英語習得という目的もありはするけれど一番望んでいるのは人種のるつぼの中
>で人に会い、15歳なりの社交生活をもってもらいたいという目的です。
>早速、いろんなことにぶつかってるようです。二週目に先生が代わって、どう
>やらクラスの大半が新しい先生を拒否する態度に出て事務局にいざ署名陳
>情書を という事態になったらしい。クラスの面々がそれについて実にスピーデ
>イに自分のスタンスを決め、アクションに移して行くと言う事が彼にはすごい
>驚きだったみたい。

そうね、こういう行動力が日本人には、たとえ国内ではどんなにリーダーシップ をとっていた子でも、衝撃なのでしょう。若いなりに各国の生徒達は個人として 生きている証拠かしら。もしあなたならどうする?横浜の中学校の英語の先生の 所に、何度も「そんな英語を教えているのはおかしい」と抗議に行ったあなたな ら。また、25年前のあなただったらどうしていたかしら。何かを「拒否する」、 つまりNo!と言うことだわね、これが日本人にはとっても難しい。(おや、石原 慎太郎みたいなこと言っちゃった。)黒白つけられずに、「まあそう目くじらた てなくとも」とか、「別に私はどちらでも」と言ってしまう根底には、洞察力と か批判精神が育っていないという面もあるでしょうし、争いを避けたいというい ささか本能的なものも働くのでしょう。たとえばイギリスで勉強するとか、生活 するというのは、そのような自分のまわりに紡がれた繭のようなものを破いてい く過程でもあると思います。がんばれY君。

>留学時代の友人のその後をたどれば、既に鬼籍に名を連ねてい
>る者も少なくない。内戦で、クーデターで。任地のスダンとエチオピアの国境
>で命を 落したアハメッドのこと。Commissioner for refugees・・・私はそ
>のころ自分の 行く先のことばかりかんがえていたよ。帰国してどう自立して生
>きていくか、そのことで頭が一杯だった。

アハメッド・・・なんて懐かしい名前。あなたがもう少しで砂漠の中に消えてい きかねなかったことを思い出したわ。いったい彼はいつ亡くなったの?知らな かった。文通を?それとも風の便りに?生き延びていればゆくゆくは屈指の外交 官か国連の幹部にでもなっていた人でしたよね。人は戦で命を落とすものだと言 うことをあらためて感じるニュースね。死んだ友達の命を貰って、Yuko、あなた は生きていくんだわ。 ほら、いつか言っていたでしょ、あなたの体に美しい妖精がとまっているのを誰かが見たって。 もしかすると歌っているときには、親しいスピリットがたくさんあなたの周りを取り巻いているのかもしれないわ。 そう感じること、無い?

>「それが恋というもんよ。お大切に。」だなんて、あなた以外に誰が言う
>のよ!
>もちろん大切にしますとも!だから、暫くメールをやめるわけもない。

誰も言わないの?あなたはいつだって「色に出にけり」の人なのに。

>恋という言葉は40になっても50になってもいや80になっても聞く人にあ
>る種の生々しさを感じさせるものかもしれませんが、「私の恋」に関しては
>「最高の人生を生きている証」として実に喜ばしい事

ふー、この部分についてはちょっと考えさせてね。いつも私は世間的な常識から、 「関係者の名誉」ということを考えるのです。人には みな違う価値観があって、そのどれもが当人達にとって必然的なものならば、批 判するに当たらないということの分からないのが世間には多いの。不用意に、あなたの「世間とは違う」価値観を表白しても、受け入れられがたい訳よ。やっかみ も相当あると思う。ロマンスとは無縁のところで 生きている人々はロマンスを生きる女に対して、とても意地悪くなるわ。 つまらない形で人を刺激しなくていいと思う。

>では、どういう感情がそして行為が恋かと定義し
>ようとすれば難しい。

定義なんかいらないわよ。少なくとも私に対しては。世間には説明できないこと でも、私には分かることってある。だから、気にしないで。長年付き合ってきた んだもの、何も一から講義してくれなくても分かります。それに、私だって女だ ということをお忘れなく。もっとも、これまたあなたとは全く違うベクトルを 持った「思い」に生きているので。それも言葉で説明するつもりはないわ。 書いたものから想像だけしておいてね。そういう性質のものだから。

恵比寿ガーデンプレイスの時、歌を歌う人には恋が必要じゃないのって聞いたら、 「一人の男に恋する以上のものを歌うことから感じている」と言ったあなた。 覚えている?私は少し不可解だった。そんな風に解脱するものかと。 要するにあれはまだあなたが誰かに出会う前のことだった訳ね。 ポテンシャルが高まっていったところへ誰かが現れた。違う?それから 恋のfirst stepにいるときほど想像力が強くなり、溢れる思いに幸せな夢の描け る時ってないんだから、せいぜいいろいろなことを感じておいてちょうだい。未 知の大陸よ。

> また、boasting Yuko
> といってあなたは笑うだろうか。

笑ったり、感心したり、異論を唱えたり、盛り上がることは確かでしょう。で も、もしかすると二十歳の頃とは違う反応もでるかもね。だって、あのころは、 あなた一人が経験者で、私は大人の恋の未経験者だったのよ。ハンディがありすぎるじゃない。25年経ってるのよ。

> おまけに最近、幾つもの恋を同時にできる気にさえなってきた。
>どうも、生き急ぐ傾向があるようですね。
>何故か何かが私を急がせる。

そろって早死になんかしたくないわね。複数の恋を同時に、というのは分かる気が します。

> 昨日思いついたすごいことについて。
>私にあなたの詩を歌わせてよ。

それは良い考えだ。あなたなら考えそうなこと。嬉しいわ、そんなお誘いを受け るなんて。「橋の上」は、もし使ってくれるなら、そのつもりで少し書き換えま す。確かに中島流の言い回しが入り込んでいる部分があるのよ。剽窃したのじゃ ないんだけれど、自然に入っちゃった。何せ毎日聴くものだから。はっきり意識 して、その部分を排除して、一つの形に作り直して送るわね。後はあなたが歌い やすいように、作曲する人と手直ししてみて下さい。歌詞を書くときのルールっ てあるの?必要最低限のことを教えてちょうだい。

公開するにはちょっと怪しいメールになっちゃった。せっかくだからなるべく全部とっておきたいけれど。 チェック入れてくれてもいいわよ。私が 編集すると平凡なものになりかねない。あなたに任せておくと「発禁の書」に なりかねない。この両極端の性格が我々の持ち味よね。ではまた。

From Keiko


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